

保田與重郎の文学思想の理解に新たな道筋を拓く批評家・前田英樹氏が、平易な語り口で書き下ろした1冊。
附録として生誕100年を記念して製作された『自然に生きる―保田與重郎の「日本」』のDVDが付く。保田が一貫して誌しつづけた「日本」の姿を、1年半をかけて撮影した美しい映像で描き出す本格評伝映像。


保田の人生を紹介する第一章「生涯」、主要作品を順を追って解説する第二章「文業」、そして保田の文学思想を「自然」をキイワードに丁寧に解き明かす第三章「『自然』の思想」の三章立て。
さらに、その膨大な作品群から前田氏みずから珠玉の文章を選んだ「保田與重郎選文集」や「保田與重郎略年譜」も付いています。
保田文学を読むための格好のガイドブック。
我が国の歩むべき道とは、そして私たちが失った本当の暮らしとは――。
昭和の文人保田與重郎の「暮らしの思想」を映像化し、現代に問いかける。
保田與重郎生誕100年記念映像

日本浪曼派を率いて近代日本文学史に一時代を画した、文芸評論家・保田與重郎。
しかし保田が、その卓絶した古典思想により一貫して我が国の歩むべき道を語り続けた文明思想家であったことは余り知られていません。
保田は、延喜式祝詞や古事記、日本書紀、古語拾遺などの古典を注釈し我が国固有の道を究明した本居宣長をはじめとする近世国学に深く学び、その業績を結晶化するかのように、かつて誰も為しえなかった本質的な「日本」論を構想しました。
保田は言います、我が国は古来より「米作りによる祭りの暮らし」を営んでいるが、その暮らしこそが建国の理想そのものであり、日本及び日本人の永遠を約束 する。その暮らしは日本人の道徳の基盤であり、さらに、戦争という観念さえ生じない絶対平和の根拠である、と。
『自然かむながらに生きる―保田與重郎の「日本」』は、保田のこの「暮らしの思想」を四季折々の美しい風景のなかに描き出し、その意味を現代に問いかける映像作品です。

監修は、近年保田與重郎への関心を深め、かつてない新しい保田論を展開する立教大学教授で気鋭の批評家・前田英樹氏。そして構成・演出は、同大学教授でドキュメンタリー映像界の鬼才・佐藤一彦氏。撮影は、ベテラン・本田茂氏。
1年半をかけ、保田の故郷でありその文学を育んだ母胎・奈良県の桜井市や明日香村を中心に、折々の米作りの風景やそれに伴う祭事、そして保田文学ゆかりの史跡などを撮影。桜井市に現存する保田の生家や終の棲家となった京都の保田邸「身余堂」も撮影しました。
近年みずから農に従事、農業復興のために精力的に活動する俳優の菅原文太氏も特別出演。また、ナレーションは生前保田と親交のあった女優の檀ふみ氏、朗読 は元NHKアナウンサーの草柳隆三氏、音楽は作曲家でヴァイオリニストのツルノリヒロ氏がつとめています。

『保田與重郎を知る』
2010年11月刊
四六判変形上製/216頁/DVD附録
定価 3,080円(税込)
ISBN978-4-7868-0186-0
※DVDは裏表紙見返しをめくると、板紙にはめ込まれています。